僕の魂が海を渡って行ったり来たりする物語

小豆島から大阪へ流れ着きました

小豆島は「険しくてデカイ」を実感 〜さぬきセンチュリーライド参戦記〜

ロードバイク初心者の僕にとって、初めてのレースだった。

 

僕でも参加できる訳だから、「草レース」には違いない。しかし、かなりのツワモノが居ることは、見た目だけでも十分理解できた。

 

多少の気後れ感が伴うのは、承知の上。今日はあくまでも完走目標なのだ。

 

 

第26回さぬきセンチュリーライド小豆島大会2016に無謀にも挑戦した

せっかくロードバイクを手に入れても、部屋に置いているだけでは無意味だ。でも、持ち出すチャンスが少ないのだ。

 

マンションの6階から、狭いエレベーターに乗せて出すだけで結構大変。パッド入りのパンツに穿き替えるなど、それなりの準備も必要だ。そこをクリアしたところで何処へ行こうか?ロードバイクで快適に走れる道は、都会にはそう多くはないと感じる。途中でお店に入って、休憩したくなることもあろう。そんな時に駐輪スペースは確保できるだろうか?もしできても、厳重にロックしないと、あっという間にその手の輩の餌食になるだろう。

 

街で見かけるロードバイク乗りたちは、そんな小さいが数多いハードルをクリアした上で、軽快に疾走しているのだ。ただ気楽に走り回っている兄ちゃんたちではないことに、自分も触れてみるとやっと分かる。

 

でも、そんな言い訳はもう止めよう。できない理由を並べることに意味なし。しかも、僕はすでにロードバイクを買って持っている。問答無用だ。後先を熟考することを敢えて避けて、参加申し込みをした。

 

これで、僕にとっての初のロングライドが、小豆島一周レースで決まり。いわゆる「マメイチ」だ。直前には、不安は確実にワクワク感によって掻き消されていた。

 

 

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すでに前夜にはかなりフラフラ

前日の10月1日の夜に、福田港に着いた。真っ暗な中を三都の家まで帰って、翌朝池田まで行かなくてはならない。もちろん、車なら全くのノープロブレム。しかし、自転車なら、どれほどの時間的余裕を見るべきか、分からない。

 

しかも、一番の問題は、言わずと知れた「小豆島は山の島」だということ。そんなことは子供の頃から知っている。でも、試走の機会はなかったし、どれほどの疲労感を伴うかは、走ってみないと分からない。要は、ぶっつけ本番なのだ。

 

 

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壮観ロードバイク大集合

 当日の朝、小豆島ふるさと村にはロードバイクが大挙して押し寄せ、それだけで結構楽しめてしまう眺めだった。自転車ブームなので、島を訪れるライダーが近年増えていることは実感できている。それが、この時リアルに僕の目の前に展開した。

 

 

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 僕が挑戦したのは、95キロのコース。小豆島の海岸線に沿って、ほぼ丸々一周。左にずっと海を見ながらの、爽快クルーズだ。

 

この日の天候は、一点の文句もない「晴れ。」やや暑いかも知れないが、コンディションは絶好だ。

 

開会式が始まった頃には、あまり疲れらしきものを感じはしなかった。たっぷり眠ったとは言い難いが、気持ちが興奮していることもあるだろう。関係者の方の挨拶や注意事項の説明、準備体操が終わって、いよいよスタート時間が迫る。

 

 

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いきなり圧倒された

数百人が一斉にスタートすると混乱するので、2分おきに30人ずつがスタートする方式。僕は、大体10時頃走り始めた。制限時間は7時間。昨夜の感じでは、制限オーバーは免れるだろう。しかし、帰りの船の時間もあるので、6時間以内に完走しないと、かなり厳しい。そんなことが頭を過ぎる。

 

スタート後、まだほんの1〜2分。最初の上り坂で、同時スタートのメンバーに一気に引き離された。

 

「何や?皆んな本気やんか!」

 

ほどなく、2分遅れスタートグループの先頭集団に抜かれた。そこで、今更ながら実感する。本気には違いないだろうが、単にレベルが違いすぎるのだ。マイペースを貫かないと、最後まで保たないだろう。

 

よし、改めて今日は「エンジョイサイクリング!」

 

 

順調クルージング

 池田から渕崎までは、道も狭いし交通量も多いので慎重に行くが、それを過ぎると、気持ち的にはかなり落ち着いてきた。国際ホテル、オリーブ温泉の前を通って、まずは前島一周コースに入る。

 

ご存知の方も多いが、小豆島は、厳密には世界一狭い土渕海峡によって、2つの島に分けられる。牛の形の頭の部分と、その他の胴体の部分。頭を「前島」と呼ぶ。

 

いかに小豆島歴の長い僕でも、こんなところを自転車で走るのは初めて。何しろ初上陸だ。小刻みなアップダウンが続き苦しかったが、下りでは爽快に飛ばせる。戸形崎向こうの小瀬の海岸線は、見事な夕陽が臨める名所だが、この時間は海も空も真っ青だった。風が吹くと辛いだろうが、それもなく、思わず大声で歌った。

 

しかし、ここから土庄港までは、最初の難所だ。そろそろ程々に疲れ始めている。しっかりと汗も出てきた。車で反対車線を走ると、ノーアクセルでもかなりスピードが出ることを知っている。ここでの登りは堪える。このあと何度も襲われる、試練の峠越えだ。

 

極端にスピードが落ちる。自分の息づかいと、風の音、ギアが回る機械音だけが聞こえて、より苦しさが増してきた。

 

途中で、パンク修理のバイクを追い抜く。仲間らしき人たち3人掛かりで、チューブ交換をしているのが見えた。何しろ初心者の僕にとっては、この種のトラブルが一番怖い。予備チューブもポンプも持ってきたが、大幅タイムロス必至だ。その瞬間に戦意喪失となるかも知れない。

 

そんなヘナチョコは僕だけかも知れないが、道に取り残されて、走行不能とならないために、オレンジの揃いのビブスのスタッフが、レースを伴走してくれている。競輪選手もいらっしゃるとかで、腿の太さがハンパない。頼もしく、心強い。ちょうど東京マラソンで話題になった、〝ランニングポリス〟と同じだ。あまりお世話になりたくないが、その時は「よろしくお願いします。」

 

 

ほとんど登りばっかりじゃん

 一旦土庄町役場のところまで戻って、今度は四海周りで島の北側へ。ここから福田までの道は、僕にとって、小豆島の中で一番馴染みの薄い場所だ。だから、距離感や坂の具合が掴みきれていない。ただ、果てしなく遠い道のりのように感じられる。当然疲れが何倍にも膨らんできた。

 

屋形崎の県道との合流前あたりでは、かなりフラフラ状態になっていたが、スタッフの方の一声、「もうすぐエイドステーションで〜す。頑張って〜!」が効いた。危険サインが点滅していたが、盛り返した感じ。そういえば、お腹が減ってきた。

 

ここまで走って、考えてみれば当たり前のことを、身をもって実感した。

 

坂道を登れば、当然同じだけ下りもある。しかし、その時間を比べれば圧倒的に下りが短い。休憩がほとんど無い感覚なのだ。ただひたすら、10メートルほど先の路面と自分の呼吸に注意を払う。まだ全行程の半分以下。あまり先のことを考えると、くじけそうになるので、止めることにする。

 

大阪城残石公園で、最初の小休止。ドリンクをボトルに補給させてもらって、バナナをいただいた。ここまで、スタートから約2時間。事前の予想よりは順調で、少しほっとする。

 

 

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 デカイよ小豆島

ここから先は、もう正直言って、苦しさとの戦いのみだった。お尻や、背中の痛みが出だして、ポジションが定まらなくなってきた。しんどくなればなるほど、急ぐ必要なんか全くないのに、気持ちが焦り出すのは不思議だ。落ち着け!

 

大部まできたら、「タートルマラソンの折り返しはこの辺やよなぁ…」と、超人たちのすごさに、改めて吃驚する。

 

小部では、この海の夏の賑わいを知らないので、寂しい気持ちになってしまう。元気を取り戻せそうな要素が、思い浮かばない。

 

吉田ダムを過ぎて福田の町が見え始めた頃、ややホッとしたのと、本気でフラフラしだしたのとで、路肩の広いところにバイクを止めた。何台か過ぎて行くバイクを見ながら、気持ちを落ち着ける。この先も苦しいのは、分かっている。でも、昨夜走ったばかりの道で、いくらか気は楽だ。

 

今休んだばかりだけれど、福田港の自販機で、ドリンクを補給。この時点で、95キロコースをキャンセルすることを考え始めた。今日中に大阪まで戻らなければならない。逆算したら、ギリギリだ。何が起きるか分からない。すごく疲れているし、余裕がないのは危険だ。70キロコースとの分岐点である橘で、最後の決断をすればいい。それにしても、やはり小豆島はデカイ。

 

 

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苦しい時こそ笑え、そして楽しめ

ゴルフ場前までの急坂、当浜を過ぎたロングな登り。気付けば、目の前の苦しさに、ほぼ頭の中を占領されている。

 

もっと楽しめ!笑え!

 

せっかく、この空気を体験することを自ら選択したのに、これではイカン。わざわざネガティヴなところを探しに入っている。

 

自転車が好きなんだ。そして、何度でも小豆島を走りたいと思っている。他の人にも、その思いを伝えたい。

 

僕はヘナチョコだけれど、ここから進化して、布教活動の一翼を担うのだ。そうしたいのだ。だから、もっと笑うべきなんだ。今を思いっきり楽しむことで、先が明るく開ける。「今」は、常に未来への入り口だから…。

 

 

満月に向かうぞぉ

小豆島は夕陽の島だ。間違いない。でも、この辺りの、東に大きく開いた海から昇る月は神々しく、僕の中では、小豆島に数多いパワースポットのひとつだ。満月から自分の方に伸びて海に映る白い光の帯は、崇高な将来に向けて駆け上がる滑走路だと信じている。だから、全身に浴びて力をもらうのだ。

 

この時間は、もちろんそんなものは見えないが、僕はこれからもこの海に通い続けるだろう。そんなことを思いながらの、終盤戦だった。相変わらず苦しかったが、先が見え始めた感があって、楽しくなってきた。

 

 

本能のまま食べる

2番目のエイドステーション、南風台に到着。疲れた。

 

何十人もが思い思いに休息しているが、知らない者同士でも、妙に連帯感みたいなものが漂い始めていることに気付く。

 

今度は、バナナとあんパンも1ついただいた。地べたに座り込んで、遠足のお弁当みたい。疲れた身に、あっという間に吸収されていくのが分かる。美味しい。スポーツの醍醐味のひとつは、頑張った後に食べて飲むことにあると考えるのは、本質とズレていて不謹慎だなんて、全く思わない。そこまでがワンセットだ。楽しいことが、いいことに決まっている。

 

のんびりムードで、日向ぼっこの趣だが、日向ぼっこにしては暑い。むき出しになった膝と腕が、ヒリヒリしてきたことが分かる。明らかに、赤くなっている。紅潮しているのではなく、もちろん日焼け。何日か後には、皮膚がポロポロ剥けるだろうが、気にしない。楽しんだ結果だから、それでいい。

 

 

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一周はお預け

 初参加にしては、自分なりに満足できる走りが出来たと思う。しかし、結局95キロは断念した。急遽、「今晩も泊まり!」という訳にもいかないので、仕方ない。

 

橘トンネルを通らずに、旧道から大角鼻灯台を周って坂手に至る部分と、三都半島一周を省略した、70キロコースに変更。もっと悔しいかと思ったが、意外にそうでもなかった。今日のところは充分満足したということでもあるし、正直なところ、やっぱりそれくらい疲れてしまったというのもある。

 

牛の形の、前脚と後ろ脚を置いて、胴体だけを周った格好になってしまったが、来年以降の目標ができたので良かった。

 

 

経験から分かったこと

手探り状態でもいいから、とにかく小豆島を走ってみる。その目標は無事果たせた。

 

そこから得たものはいくつもあるが、そのひとつ。

 

初心者の自転車乗りにとっては、小豆島は厳しいということが、よりはっきりした。本格派と同等に、電動自転車派にも広く門戸を開放すべきだろう。電動のレンタル自転車(シェアリング)を充実させると、観光客にはさらに優しい島になれるはずだ。

 

それから、小豆島は温かいということ。たくさんの方の助けの下で、この手作り感溢れるイベントが開催されていることが、とてもよく感じられた。

 

それに、もちろん小豆島の自然が素晴らしいということ。海と山が織り成す風景が、その場所場所によって微妙に表情を変える様が、素晴らしい。あわよくば、もっと受け止めてみたいところだが、現状の自分には技量が足りなさ過ぎた。そこは、自分自身の課題としよう。

 

そして、最後は、やっぱり小豆島が好きだということ。苦しくても、いつも僕を大きく導いてくれている。この場所と出会えたことに、改めて大きく感謝できたことが、今回の最大の収穫となった。

 

 

レースだから、結果も大事

70キロの山道を、4時間40分台。僕の初参戦の結果だ。レースなんだから、その結果が全て。それ以外のものは何もない。

 

ある意味、そういったシリアスなアスリート的思考も取り入れた方がいい部分もある。そこを励みにすることが、新たなステージへの近道でもあるから…。

 

とにかく、今回はメッチャメッチャ疲れた〜!ボロボロだったけど、一歩前進できた。昨日までは「走ったことのない自分。」今日からは「走った自分」なのだから、明らかに違う。

 

 

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