僕の魂が海を渡って行ったり来たりする物語

小豆島から大阪へ流れ着きました

甲子園の健全化には、選手のための大会であることの再認識が必要

小学校時分から投げ続けた結果です

甲子園大会の開幕直前に、出場校のピッチャーに対して、主に肩と肘の運動障害の検査を実施し、場合によっては投球禁止措置を講じるという試みが始まったのは、今から20年ほど前のことです。

 

その間、実際に本大会での投球が禁止されたピッチャーは、僕の記憶する限りでは皆無です。

 

でも、この制度の本格導入前年大会での事前調査によると、全投手のおよそ15%に強い炎症症状が認められ、およそ70%に故障歴があったと報告されています。

 

その後のコンディショニング技術の向上などがあるにせよ、厳しい予選を勝ち抜いた直後の各投手にあって、ただの一人も投球禁止を命じられた者がいないというのは、やや不自然な気さえします。

 

現在の甲子園の大会では、毎日10名弱ほどの理学療法士が待機する体制を取っているそうですが、そちらの方から漏れ聞いた話によると、「投球禁止」に絶対的命令権はなく、最終的には本人や監督の判断に任せることになっているので、かなりひどい状態でも投げている子は居るんじゃないか、ということです。

 

「甲子園だから」「最後の大会だから」という気持ちはよく分かります。でも投げたら投手生命が終わってしまうかも知れません。

 

それに対して、大人が取ることの出来る最も効果的で唯一の方法は、「甲子園の価値を下げる」ことです。甲子園へのこだわりを捨てさせるのです。

 

大人が子供を守らなきゃ、誰が守る?

具体的には、

  1. 分散開催
  2. 大会期間の短縮

これだけです。

 

通常、夏の甲子園大会では、決勝戦進出までに5〜6試合を要します。トーナメント戦なので、当然1〜2回戦の試合数が多くなります。従って、開催期間2週間のうち、始めの1週間に1〜2試合、後の1週間に4試合ほどを行う日程になってしまいます。偏り過ぎているし、疲れが出る後半ほどキツくなって危険です。

 

これを3試合ずつにするだけでも、連投のリスクを回避出来ます。

 

そうすると、3回戦までの全41試合を、甲子園球場だけで行うのは不可能です。分散開催しかありません。

 

 甲子園じゃなきゃダメですか?

甲子園球場近辺には、他にも幾つか大リーグ級の球場があります。
 
京セラドーム大阪。ほっともっとフィールド神戸。もちろん全国大会を開催するに十分な規模、アクセスを持っています。

 

3回戦までの試合を3球場に分散させたとしましょう。1球場で1日3試合行えば、1日で9試合消化できますから、5日ほどでベスト8まで決定です。

さらに日中の炎天下での試合を避けるために、「昼休み」を設ける案もあげておきたいです。試合を行う時間を、朝と夕方以降に限定するのです。

 

第2週からの残り7試合は、全部甲子園での試合とすることが可能なはずです。

 

各試合間に休養日を挟みながらでも、余裕がある運営が出来ます。

 

余裕ができれば、天候や延長引き分け再試合などに伴う日程変更にも対処しやすくなり、これまでよく見られた、試合を消化することを優先するあまり、選手に無理を強いることが避けられます。

 

厳密に、開催期間の短縮と言えるかは別にして、実際に試合が行われる日数を半減させ、減った分を丸々休養日にあてることが出来ます。

 

選手側から見れば、「甲子園で試合する前に負けてしまった」という不満が出るでしょう。

 

でも、例えばサッカーの全国選手権で負けたチームの選手たちは、Jリーグ発足前には、結構泣き崩れるような子も多かったようです。しかし、それ以後は、はっきりと目標を世界に向けている子が増えたのでしょう、めっきりそういう子が減ったように感じます。

 

野球も同じで、甲子園よりもヤンキースタジアム、甲子園よりもフェンウェイパーク、甲子園よりもオリンピック、甲子園よりもWBC、と思っている選手も多いでしょうし、またそうであるべきです。

 

主役はいつでも選手であるはず

大人側から見たときのデメリット、これのみがやっかいですね。

 

そもそも、甲子園大会の主催新聞社は、購読者増のキラーコンテンツが欲しくて、大会を始めた向きがあります。野球の振興だの青少年の健全育成だのは、後付けの屁理屈であって、金儲けが主目的になり過ぎた感は否めません。既得権益を手放すことへの抵抗感と、「教育の一環」の旗印の下、伝統を重く見過ぎ、変革に対しては消極的姿勢が目立ちます。

 

ここを取り戻すべく、高野連内部には若いグローバルな人材がもっと必要なはずです。そういう人たちの声を大きく発信して、本当の意味での「高校球児たちのための大会」に戻していって欲しいです。

 

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最後に

とある強豪校の監督が、自チームのエースが連投を強いられて投球過多になっている、という指摘を受けた際に、「困難を根性で乗り越えるのが高校野球だ」と発言し、主にメジャーリーグのスカウト陣から呆れられた、という事がありました。

 

そうやって将来ある選手を潰している指導者は、未だにいます。その考え方を支持する層も、少なからずいます。

 

甲子園が大好きな、僕のような野球ファンが言いたい事はただ一つ。

 

甲子園を高校生に返してあげましょう。

 

作られたかのような、汗と涙の感動のドラマが見たい訳ではないし、勝利至上主義のスパルタ野球が見たい訳でもありません。

 

「よう頑張ったな」

「うん」

「野球やってよかったなぁ」

「うん」

 

それ以上のものはいりません。

 

今年も暑い夏になりそうです。