瀬戸内国際芸術祭の次回開催を強く望む 〜潮耳荘で五感を研ぎ澄ます〜
瀬戸内国際芸術祭2016(せとげい)が終わって、早2ヶ月以上がたった。
撤去されてしまった作品も多いが、そのまま残されて今も鑑賞できるものもある。
そんな中のひとつ、小豆島は三都半島、神浦(こうのうら)の潮耳荘をご紹介。
いつもあるのは波の音
小豆島オリーブバス三都線の終点「神浦西」から、さらに先へ進もう。すぐに海辺に異様な形の建物が見えてくる。
フタコブラクダの背中のようなドームが大きく鎮座する。かなりの存在感だ。
海側にまわってみると、そのコブから象のハナようにパイプがうねり出ていて、先は大きなラッパのように広がっている。全体を赤く塗られたハナは、砂浜へ向けて何かを放出しそうな勢いだ。
しかし、実際はそれとは逆で、こいつは言わば「集音器。」
砂浜へ打ち寄せる波の音を拾って、ドームの中へ導き響かせる。
決して大きな音ではない。瀬戸内の波は大抵穏やかだ。放っておいても勝手に耳に入る音ではない。よく聞けばそこにある音、それでも確実に耳に、胸に刻まれた音なのだ。
音と光の融合だったのか
ドームは、よく見ると廃材で出来ている。たぶん取り壊した建物の柱を組んだものだ。それは完全に隙間なく組まれたものではなく、中から見上げると、たくさんの筋になって光が漏れる。
小豆島は、波の音、色とりどりの光、が折り重なって出来ている。なるほど、そんな意味を含んでいるのか?妙に納得できた。
他にも、海に入った時の水の感触、夏の暑さ、草木、潮、醤油の香り。五感が刺激されまくりだ。
そのあたりが、脳の〝リラックスホルモン〟かなにか、そんな感じのものに作用するのかも知れない。根拠はないけど、多分間違いない。
芸術に触れる機会をこれからも
地元のオッちゃんやオバちゃんの正直な言葉として、「作品がよう分からんネン」というのが多かったのも事実だ。観光客が増えるのは、まあ嬉しいが、肝心の作品は理解不能だと…。
でも、芸術なんてそれでいい、と僕は思う。
評論家になるわけじゃないのだから、感じるままに感じればいいだけのことだ。面白いと思えるものは、面白い。何とも感じないのなら、そのままスルー。
池田のふるさと村に今でも展示されているはずの「花寿波島の秘密」は、「潮耳荘」の制作者の一人である康夏奈さんの作品だそうだ。以前「花寿波島…」の方も拝見したが、僕はこんな風に、作品にボリューム感があって、説明なしでも「なるほど」って思えるものの方が受け入れやすい。
そのへんは人それぞれだが、何れにしても、日常とは少し離れた刺激はどんどん受けた方がいいし、そんな機会がまた訪れることを願っている。
願いつつ、またガイドブックを引っ張り出しては眺めたりしている。まだ残っている作品巡りでも、ブラッと行ってみようか。
まるで遺跡巡りよろしく…。