〝「なぜか売れる」の公式〟は、素人でもしっかり腑に落ちる 〜理央さんの人柄そのままの本なのだ〜
とても高度なことを、誰もに分かりやすく伝え、しかも共感とともに実践してみようと思わせるとなると、これはそう簡単なことではありません。
しかし、この本『「なぜか売れる」の公式』は、「売る」「買う」という普段何気なく行われる活動に、実はしっかりと科学的裏付けがあるのだということが、とても分かりやすく書かれています。決して〝何気なく〟だけで事が進んでいるわけではない、ということが、僕のようなド素人にも納得できます。
毎日ただ目にしているだけのことを、こうも理論的にスルスルと紐解かれてしまうと、自分がいかに表面だけしか見てこなかったのかを痛感させられます。
素晴らしいなぁ、この本…。
誰もがいつも売る側であり、買う側でもあります
「自分は営業じゃないから…」みたいな理由でこう言った話に興味が持てないとしたら、きっと大きく損をしてしまうことになります。
私たちは誰もが、大きな経済活動の中に取り込まれて日々を過ごしているはずなので、自らの意思に関係なく、常に売る側の立場であったり買う側の立場であったりします。
だから、いわゆる「ヒト、モノ、カネ」がどのように動いているかを少しだけ深く知ることは、消費活動を豊かなものに変える力となる筈なのです。
マーケティング、って何?
著者の理央周さん曰く、「マーケティングとは自然に売れる仕組みを作ること」だそうです。それを成すために考えるポイントはたったの3つ。
- 何を
- 誰に
- どうやって
買ってもらうかを、徹底的に考えること。
なるほど、最初の一歩から「う〜ん」と唸らされました。
例えば食べ物屋さんなら、「うちは何でも美味しいですよ。どなたにでも喜んでいただけます。」と、やってしまい勝ちです。
でもそれでは、ホントは何に自信を持っているのか、それを一番欲している消費者は誰なのか、という点がボヤけてしまいます。ピンポイントで訴求した方が、メッセージが届きやすくなって効率的であるでしょう。
僕は医療関係の仕事をしていますが、特に開業医の先生たちの中には、こういった〝ボヤけた〟感じになっている方が多いように感じます。
お医者さんは皆それぞれ、得意分野を持っておられますが、それだけを前面に押し出すことに不安を感じるのでしょう。患者さんに、守備範囲が狭いと思われてしまうよりは、何でも診てもらえると思われた方が安心できる、というのは僕も理解できます。
しかし、その結果、どこの病院もこれといった特徴のない「何でも屋」になってしまって、結局は老人の「憩いの場」になっている、というケースもたくさん見受けられることは、皆さんよくご存知でしょう。これは、あまり声を大きくして言うことでもないとは思いますが…。
あくまでも顧客目線
マニュアルでがんじがらめにするのではなく、顧客一人ひとりのニーズに合わせて個別に対応するのを、「ワンツーワンマーケティング」と言うそうです。
代表格は、リッツ・カールトンです。これは超有名なので、皆さんよくご存知でしょう。それとは別にこの本では、アメリカの通販会社のことが紹介されています。
ある方が、その病床の母親のために通販で靴を買ったそうです。しかし、すぐに母親は亡くなってしまいました。会社から「靴の具合はいかがでしたか?」とメールが来ました。「もう返品したい」という旨をオペレーターに伝えると、そんな規約はないのに、集荷の手配をした上に、お悔やみのメッセージを添えた花まで届けたそうです。
素晴らしいのは、一連のこの動きが、ひとりのオペレーター個人の判断で行われた、ということにあると思います。一社員の裁量に任せることができる会社と、それに応えることができる社員。人の温かみこそが最高のサービスであるということを、改めて実感するエピソードだと思います。
冒頭に、売れる売れないには「科学的裏付け」があると書きましたが、前提として人間的魅力があることは言うまでもありません。オンラインで、たとえ直接人と接することが無くなったとしても、その向こうにある空気感を敏感に察知することが出来るのが人間です。また、誰もがそれをとても大切に感じてもいる筈です。
この本との出会い
実は、この本の著者の理央周さんとは、一度だけ食事をご一緒させていただいたことがあります。早いもので、もう1年半も前のことです。
立花岳志さんのブログセミナーが名古屋で開催され、それに参加することにしました。「ブログ初心者セミナー」と題されたそのセミナー後の懇親会で、たまたま僕と席が向かい合わせになったのです。
僕は全然理央さんのことを存じ上げなくて、ただ僕と同じように「ブログでも始めてみようかなぁ?」と思ってるオッちゃんなんや、と決めつけていました。
だから、名刺を頂いてお互い自己紹介しても、「なんか難しそうな仕事してはる人やな」くらいにしか思ってなくて、正直その場ではピンと来てなかったです。
僕は、ものすごくトンチンカンな質問をしたりして、ビックリさせてしまった筈ですが、丁寧に穏やかにお話される姿が印象的でした。
理央さん、素晴らしい方です
次の日の仕事帰りに、いつもより少し早めに帰途に着いた僕は、フラッと本屋さんに立ち寄りました。自己啓発とかビジネス書のコーナーが、僕の定位置です。
平積みの本に一通り視線を走らせてから何気なく頭を上げると、目の前に「理央周」という字があるではありませんか。
「えっ?昨日の人や!」
急いで手にとって、巻末のプロフィール欄を確認しました。
大学で教えておられるとか、「Amazon…」だとか、確かにいろいろ仰ってました。その通りのことが書かれています。
「ワッちゃあ〜、めっちゃすごい人や!」
じわじわと今頃になって気構えている自分の感度の鈍さを恨みました。何か失礼なこともいっぱい言ったかも知れません。
それなのに、「森下さんはどう思いますか?」とか振っていただいて、とても良い場の雰囲気をリードして下さいました。
一流の人というのは、こういう方のことを言うのでしょう。地位を振りかざして、踏ん反り返っているくせに、自分が優位に立てないと分かると、途端にヘコヘコするような人は、たくさん知っています。全然そういうところを感じさせずに、僕みたいな者にも調子よくペラペラ喋らせていただいて、ありがとうございました。
今思い出しても、顔から火が出そうです。
いろいろ勉強させていただきます
僕は今のところ、給料をもらって生活するスタイルですが、少しずつ軸足を移していきたいとも考えています。
勉強すべきことは山積されていますが、この本が一つの大きな教科書になりそうに感じています。
また、人としての魅力をもっと増すためにも、ぜひ見習うべき目標のお一人として、理央さんとのご縁を頂いたことに、とても感謝しています。